量子もつれガンマ線放射による分子間相互作用プローブの第一原理計算
放射性核種で標識したプローブ分子を生体内に導入し、放射性核種周辺の情報をγ線の摂動角相関等を用いて体外から非侵襲測定する光子対診断技術を実現するには、生体内の放射性プローブ分子の挙動について詳細な理解が欠かせません。特に、(1)放射性核種の核壊変が分子中の電子をどれほど掻き乱し、平衡に達するのに要する時間はどの程度か?すなわち核状態の変化が引き起こす初期電子ダイナミクスの解明と、(2) 放射性プローブ分子の生体内での環境変化→電子状態変化の情報が、どのように・またどの程度γ線放出に影響を与えるか?すなわち電子状態の変化が核スピンダイナミクスに与える影響の定性的・定量的理解が不可欠です。そこで本計画研究では、量子もつれガンマ線放射による分子間相互作用プローブの第一原理計算手法を開発します。具体的には、代表者らが開発してきた時間依存波動関数理論を応用し、親核の核壊変直後の非断熱電子ダイナミクスの第一原理シミュレーション手法を確立します。また、代表者らが開発した分散力を記述できる密度汎関数理論を用いて、生体内電場、磁場環境、pHなどの摂動からガンマ線放射を理論的に予測する手法を確立します。これらの手法を用いたシミュレーション結果を各班の実験結果と比較検討することで、光子対診断治療学の学理を創成します。
メンバー
研究代表者:佐藤 健(東京大学・大学院工学系研究科・准教授)